ローズウォーターを始めとするハーブウォーター(芳香蒸留水)は植物を原料として蒸留法にて抽出したエキスのうち,水及び水に均等に分散する物質によってできる水性の液をいいます。揮発性をもち,加熱することにより水とともに気体となりやすい物質のうち,比較的,親水性の性質をもつものを飽和状態で含有していて,親油性,親水性を併せ持つ,両親媒性の性質をもったものを含有することが特徴といえるでしょう。こういった特徴から,芳香成分を含有することがから香料としての機能を有したり,皮脂及びその下層の細胞間質液に浸透しやすいため,肌への外用の際に馴染みやすいことから,ブースターやローションの機能を有したり、これからの活用にも期待されます。
今回紹介する研究では、ローズウォーターの含有する揮発性水溶性化合物の分析のための最良の方法を見出すことを目的とし、液体 - 液体抽出(LLE)、ヘッドスペース技術(HS)および固相抽出(SPE)の3つの異なるサンプリング技術を比較した。そして,ローズウォーターの揮発性水溶性化合物をガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)によって分析しています。
以下の3つが比較検討した方法です。
1)液体 - 液体抽出(LLE)
NaClを含有するローズウォーターの試料を250mLガラスフラスコに入れ,抽出は、5mLのクロロホルム、ジクロロメタン、n-ヘキサン、および酢酸エチルを用いて行った。 フラスコを超音波浴に導入し、25℃で30分間超音波処理して有機層をピペットで分離した。
2)固相抽出(SPE)
2つの異なる固相カートリッジを用いてローズウォーターからの揮発性化合物の単離および濃縮について試した。固相抽出は、Supelco(Supelco、USA)のVisiprep SPE真空マニホルドで行った。揮発性化合物は、有機溶剤(n-ペンタン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、およびメタノール)を用いてカートリッジから溶出した。
3)ヘッドスペース技術(HS)
揮発性化合物の単離および予備濃縮は、7697Aヘッドスペースサンプラー装置(Agilent、USA)を用いて行った。
その結果,固相抽出法SPEでは、液体-液体抽出法LLEおよびヘッドスペース法HSよりも、2-フェニルエチルアルコールの回収率が高く,液体-液体抽出法LLEでは、シトロネロール、ネロールおよびゲラニオールの回収率が他よりも高いという結果を得ました。また,α-ピネン、リナロール、β-カリオフィレン、α-フムレン、メチルオイゲノールおよびオイゲノールなどの化合物については、液体 - 液体抽出法LLEおよび固相抽出法SPEで最良でした。
これらより,芳香蒸留水の成分によって抽出法による回収率の違いがみられ,分析に最適の抽出法や条件はさらに検討が必要であることが示唆されました。
また,蒸留の過程により含有する成分の種類や量が変化することから各々の植物や含有させたい物質により適切な抽出条件(原料の準備や蒸留の条件など)を用いる必要もあり、今後の研究にも期待が大きいです。
〔参考文献〕Canbay HS. Effectiveness of Liquid-Liquid Extraction, Solid Phase Extraction, and Headspace Technique for Determination of Some Volatile Water-Soluble Compounds of Rose Aromatic Water. Int J Anal Chem. 2017. Epub 2017 Jul 16.