チョウマメ(マメ科バタフライピー/蝶豆 Clitoria ternatea)は、花が蝶に似ていることからつけられ,英語名でも同様に「Butterfly pea」と呼ばれている。花弁に青色のアントシアニン,デルフィジンを豊富に持ち,タイや台湾などで抗酸化のためのハーブティーとして用いるなどされ,人気のあるハーブ、トトラボのセミナーでも登場の多いハーブの一つだ。
今回紹介する研究では、チョウマメ花弁またはチョウマメの成分であるケルセチン-3β-D-グルコシドがTNFα-受容体1(TNFR1)に介される抗体を中立状態にすることで,コラーゲン誘発性関節炎の症状を改善するかどうかについてマウスを用いて調べた。
マウスによるコラーゲン誘発性関節炎はヒト慢性リウマチのモデルとして用いられている。2 型コラーゲン(CII)免疫により関節炎を誘導して症状を発症させ,それに対するチョウマメ及びケルセチン-3β-D-グルコシドの作用について検討した。指標としたのは,ミエロペルオキシダーゼ活性による滑膜多形核細胞の蓄積、滑膜および全身へのサイトカインの放出、ケモカインおよびC反応性タンパク質(CRP)の状態,滑膜でのフリーラジカル生成および抗酸化作用、ならびに滑膜でのTNFR1、トール様受容体2(TLR2)の状態,シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)および誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現,滑膜でのマトリックス-メタロプロテアーゼ-2(MMP-2)活性のザイモグラフィー法による分析である。
その結果,関節炎スコアおよび関節の腫脹状態、滑膜関節の炎症および酸化ストレスパラメータの増加から,関節炎は誘発二日後より症状がみられた。24日後までの長期的なチョウマメ(50mg / kg)およびケルセチン-3β-D-グルコシド(2.5mg / kg)抽出物の投与は, マウスあたり10μgのTNFR1抗体による関節炎の症状の緩和を増大させた。TNFR1、TLR2、iNOS、COX-2の有意な減少(p <0.05)と並行して、炎症性サイトカイン、ケモカイン、活性酸素種(ROS)/反応性窒素種(RNS)およびMMP-2発現の抑制がみられ,関節炎の症状緩和が示唆された。
この研究によって,チョウマメおよびその成分であるケルセチン-3β-D-グルコシドは、関節における滑膜でのマトリックス-メタロプロテアーゼ-2(MMP-2)活性を指標とする抗関節炎活性を有することが示唆され,今後の関節炎の症状改善、慢性関節リウマチのための一つの方法として期待したい。
本論文にはチョウマメ花弁は,古くから関節炎に使われてきたと記されており,一つのタイプであるコラーゲン誘発性関節炎について,そのメカニズムの一端が解明される研究といえる。
〔参照論文〕Adhikary R, Sultana S, Bishayi B. Clitoria ternatea flower petals: Effect on TNFR1 neutralization via downregulation of synovial matrix metalloproteases. J Ethnopharmacol. 2017; 210: 209-222.