植物療法 研究トピックス
すっかり秋めいてみたこの頃、秋の七草の一つである葛(クズ)の有効性についてのお話である。
8月の終わり頃に、房のような花序を葉の後ろに隠しながら、甘い香りを漂わせるクズは日本各地に自生している植物である。古くから、葛粉を材料に葛湯や葛餅を味わっって滋養としたり、また皮を剥いで乾燥したクズの根は、生薬では葛根といわれ、血行促進や発汗、解熱作用があるとされ、風邪、頭痛、肩こりなどに用いられてたりと、日本人には、とても馴染み深い植物である。
今回は、このクズの含むイソフラボンの一つプエラリンが、糖尿病を誘発されたマウスにおいて、抗高脂肪作用及び血糖降下作用を及ばすか否かについて検討した研究の紹介をする。
ストレプトゾトシンにより糖尿病を誘発された糖尿病マウスにプエラリンを投与したところ、血清のインシュリン濃度が増加するとともに、プエラリンの投与により、グリセミア値は顕著に低下した。更にプエラリンは、マウスに誘発された脂質異常症の症状を改善した。組織病理学的な検討では、プエラリンを投与されたマウスでは、ストレプトゾトシンにより誘起された膵臓組織の損傷が軽減されることが確認された。一方、膵臓内の、インシュリン受容体RS-1のタンパク質濃度とインシュリン様成長因子IGF-1は増加した。また、骨格筋のインシュリン受容体及びペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体PPARについてのmRNAは、プエラリン投与後、増加した。
これらの結果より、プエラリンはインシュリンの発現を亢進し、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスの恒常性を保持し、高脂肪及び高血糖を降下させる作用を有することが示唆された。
クズは、米国でもあまりの繁殖力にデビルズウィードといわれているが、一方、その効能が期待され、Kudzuと呼ばれてサプリメントもある。また、同じ属のプエラリアも外用の豊胸クリームなどに使われている。私たちのごく身近にあるクズが、ハーブとしてのポテンシャルを多く持っていることは非常に興味深い。
〔参考文献〕Wu K, Liang T, Duan X, Xu L, Zhang K, Li R. Anti-diabetic effects of puerarin, isolated from Pueraria lobata (Willd.), on streptozotocin-diabetogenic mice through promoting insulin expression and ameliorating metabolic function. Food Chem Toxicol. 2013;60C:341-347.