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リナロールなどを含み、柑橘類の精油のなかでもひと際そのリラックス効果により好まれているベルガモット(Citrus × bergamia)はビターオレンジ(C. aurantium) とマンダリンオレンジ(C. reticulata)の交雑種であると推定されているミカン属の植物だ。他の柑橘類が食べるためにも用いられるのと異なり、このベルガモットは専らその芳香性が活用されてきた植物である。


このベルガモットの精油が、多くの生理現象の引き金となったりする細胞内のCaイオンの濃度変化にどのように作用するかを、ヒト臍帯静脈内皮細胞での細胞内Caイオン動態への影響をみることにより調べた。Fura-2という蛍光物質が細胞内Caイオンの濃度変化をみるためのマーカーとして使われた。

結果、細胞外Caイオン存在下では、ベルガモットは、部分的及び非選択性Caイオンチャネルブロッカーを阻害することで細胞内Caイオン濃度を増加させた。

Caイオンフリーの培養液中で、ベルガモットは濃度依存的にCaイオン濃度を増加させたことから、これは細胞内のCaイオンを動員したことと推察できた。

ベルガモットにより誘発されたCaイオンの増加は、Caイオン放出阻害剤ダントロレン、ホスホリパーゼC阻害剤U73122、およびイノシトール1,4,5 - 三リン酸チャネルブロッカー、2 - アミノエトキシボラン(2-APB)によって阻害された。

また、ミトコンドリアでのCaイオン取り込み阻害剤であるカルボニルシアニドm-クロロフェニルの存在下で、ベルガモット精油はCa イオン濃度を増加させた。

これらの結果より、ベルガモットは細胞のCaイオン貯蔵機構に作用することにより、Caイオンの細胞内濃度変化に影響を与えることが示唆された。

アロマテラピーで用いる精油が、細胞内のCaイオンのような、生理機能全般など生物の基本的なしくみに関わるような物質の動態になんらかの影響を与えることは非常に興味深い。

 

〔参考文献〕Kang P, Han SH, Moon HK, Lee JM, Kim HK, Min SS, Seol GH. Citrus bergamia Risso Elevates Intracellular Ca (2+) in Human Vascular Endothelial Cells due to Release of Ca (2+) from Primary Intracellular Stores. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:759615.

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