植物療法 研究トピックス
アンジェリカは欧州やシベリアなど寒冷地の湿原や、アルザス地方などの山地に自生するセリ科の二年草で、耐寒性が強いことから、寒い地方でも大きく育ち、貴重な野菜としても活用されてきた。初夏には、黄緑色をした散形花序をつけ、アンジェリカ根やアンジェリカ種子が、女性ホルモンの調節作用を有するとされることから、更年期障害やPMS(生理前症候群)といった女性の不調に活かされてきた。
本研究では、このアンジェリカ根由来のクマリンについて、抗不安作用があるか否かについてマウスを用いて検討している。
まずは、アンジェリカ根の石油エーテルでの抽出物を試料として、それを摂取したマウスでの抗不安作用の発現について、高架式十字迷路試験により調べた。
その結果、5mg/kgもしくは、10mg/kg体重の濃度のアンジェリカ根抽出物を摂取することにより、高架式十字迷路試験でのマウスの行動観察により、不安水準が下がったことが示唆され、抗不安作用が確認された。
このアンジェリカの試料を、TLC(薄層クロマトグラフィー)にて成分分析を行ったところ、イムペラトリン(IM) とイソイムペラトリン (IIM) というクマリン類の成分が同定された。
そこで、これらの成分のみで抗不安作用が発現するか否かについて、同じくマウスでの高果式十字迷路試験と、不安水準を評価する明暗箱試験にて検討した。
その結果、各々の成分でもこれらの効果がみられることが確認された。また、これらを混合することで、より不安水準が下がることが示唆され、更に大きな抗不安作用が発現するという結果を得た。
このように植物化学成分を単独で用いるより、混合物として用いることで、更に効果が大きく発現したことから、単一の成分ではなく、製剤に含まれる植物化学成分が働き合い、植物療法の有効性発現の特徴の一端が示されたと考えられる。この研究の結果より、メディカルハーブの含有する成分について、相乗効果が示唆されている。
【文献】Kumar D, Bhat ZA, Kumar V, Shah MY. Coumarins from Angelica archangelica Linn. and their effects on anxiety-like behavior. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2013 Jan 10;40:180-6.