植物療法 研究トピックス
No.33 エキナセアはマウスにおける拘束ストレス誘導性の免疫抑制を防ぐ
エキナセア(キク科Echinacea purpurea)は,上気道感染症や風邪の予防など,免疫機能が関わる不調に古くから用いられてきた。
今回紹介する研究では,拘束ストレスといった肉体的および精神的ストレスによって免疫機能がどのように低下するか,脾臓のNK細胞やTリンパ球,サイトカインといった免疫機能の発現に関与する細胞や物質がどのように影響を受けるかを調べることによって,エキナセアの免疫調整作用について検討した結果である。
BALB / cマウスを対象に,拘束ストレスにより誘発される免疫抑制状態に対して,エキナセアの圧搾汁がどのように保護効果を示すかを調べた。
マウスに拘束性ストレスを課し,それにより低減する免疫機能の指標となるいくつかの物質について,その変動をみた。
1)脾臓の細胞増殖
2)脾臓のNK細胞の活性
3)血中のTリンパ球(CD4 +,CD8 +)の割合
4)血清中サイトカイン(インターロイキン6,10,17)の濃度
5)サイトカインについてのmRNA発現
その結果,以下のことが確認された。
1)エキナセア摂取により,脾臓細胞の増殖および脾臓のナチュラルキラー(NK)細胞活性の抑制ストレス誘発性減少を有意に正常化した(p <0.05)。
2)血中のCD4 +およびCD8 + Tリンパ球の割合を有意に増加させた(p <0.05)。
3)インターロイキン-6(IL-6),インターロイキン-10(IL-10),およびインターロイキン-17(IL-17)を含む血清サイトカインレベルを改善した(p<0.05)。
4)脾臓におけるこれらのサイトカインのmRNA発現を回復させた(p<0.05)。
これらの結果より,エキナセアが,脾細胞増殖およびNK細胞活性を増加させることによって拘束ストレス誘発性免疫抑制に対して有益な効果を有し,一方で血中のTリンパ球サブセットおよびサイトカインレベルを調節することが示唆された。
拘束ストレスをモデルとした研究では,拘束ストレスによるうつ病様症状の発現について,海馬BDNF(神経栄養因子)の発現量や回転かご式自発運動量測定装置を用いた自発運動量の低下やストレスの指標となる血中コルチコステロンの増加がこれまでにも確認されている。
拘束ストレスのような過剰なストレスとうつ病の発症との関連は大いに考えられ,ストレス負荷と神経系,免疫系の関連についても興味が深いところだ。
〔参考文献〕Park S et.al., Echinacea purpurea Protects Against Restraint Stress-Induced Immunosuppression in BALB/c Mice. J Med Food.2018; 21(3): 261-268.