植物療法 研究トピックス
No.36 タンポポエキスは小児がん細胞に対し抗ガン作用を示し、ヤドリギ療法を強化する
春になると太陽のような黄色の花を咲かせるタンポポ。そしてクリスマス、お正月の頃にだんぜん目立つ寄生植物ヤドリギ。これらの植物が相乗的に働くことを示唆した興味深い研究を紹介したい。
タンポポ(Taraxacum officinale)抽出物は成人のがん細胞に対して抗がん作用を示すことが確認されているが、小児のがん細胞についてはどのようかまだ調べられていない。
そして、抗がん治療のためにヤドリギの抽出物を用いるという「misltoe therapy ヤドリギ療法/ミステル治療」というものがある。このヤドリギ療法とは、ルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィー医学での治療法で、ヨーロッパの一部の国で癌患者に処方されている薬のひとつであるセイヨウヤドリギ(Viscum album)製剤を用いる療法というふうにこの論文には記してある。
免疫系を刺激し、癌に罹患した場合、生存期間を延長し、生活の質を向上させ、化学療法や放射線療法の有害作用を軽減するといわれ、通常皮下に注射するためヤドリギ抽出液注射療法ともいわれているそうだ。
今回紹介する研究は,小児のがん細胞に対してタンポポエキスを単剤としての用いた時の効果はどうか、またはヤドリギ抽出物との併用はどのような効果をもたらすかを検討したものである。
方法は以下のとおり。
小児がん細胞株として,2つの神経芽細胞腫細胞(SH-SY5Y, Kelly)を用いて、タンポポ製剤は、水性タンポポ抽出物を発酵させ用意した。
抗がん作用は,培養がん細胞の生存率をみることによって評価、ヤドリギ療法との相乗効果はタンポポエキスとヤドリギ製剤(Iscucin®TiliaeまたはIscucin®Pini)での共処理により検討した。
そして、試験したすべてのがん細胞株は正常なヒト線維芽細胞株NHDF-Cよりもタンポポ抽出物に感受性が高く、がん細胞への選択性が高いこと、がん細胞株では、タンポポ抽出物はアポトーシスとミトコンドリアの完全性の喪失、ならびに浸潤と移動の阻害を誘引すること、また、タンポポとヤドリギ抽出物の併用により,相乗効果が確認できたことなどの結果が得られた。
これらの結果は,小児のガン治療におけるヤドリギ療法で,タンポポ製剤を補助的に活用できる可能性を示唆している。
ヤドリギは,他の植物に寄生して成長し,成長するにしたがって寄生された木は、次第に活力が弱くなっていく。こうしたことから、ルドルフ・シュタイナーは,自然界における腫瘍形成と相関し、人間内部の腫瘍形成に対応するとみたということである。
タンポポとヤドリギ、この二つの植物の相乗効果が奏効することはとても興味深い。自然界でのタンポポとヤドリギのつながりはどんなふうなのだろうか。そしてアントロポゾフィー医学では、リンゴやカシの木、モミなど、宿主の木が何であるかによってヤドリギ製剤がどういったがんに効くかが違うそうで、そんなこともとっても興味深い。
〔参考文献〕Menke K. et.al., Taraxacum officinale extract shows antitumor effects on pediatric cancer cells and enhance mistletoe therapy. Complement Ther Med. 2018 Oct;40:158-164.