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植物療法  研究トピックス
No.34 月桃のもつ抗ガン作用とその要因物質としてのデヒドロカヴァイン
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ショウガ科ハナミョウガ属 Alpinia zerumbet は,ゲットウ(月桃)として親しまれている常緑多年生草本植物であり、日本では沖縄県や九州南部、例えば沖縄諸島、奄美大島や徳之島などに分布し,サンニン(A. zerumbet var zerumbet島月桃),ソウカ(A. zerumbet var excelsa大東月桃)という名で親しまれている。

今回紹介する研究ではゲットウの生物学的活性について,抗がん作用に注目して研究することを目的とし,培養細胞における検討と,マウス異種移植片モデルとが行われた。

 

結果は以下の通りである。

1)ゲットウ抽出物のうち,特にジクロロメタンおよびメタノール抽出物は,Ehrlich腹水がん(EAC)細胞に対して最も強力な抗腫瘍活性を示した。

2)これをさらに分けて調査したところ,最も活性の高いジクロロメタン抽出物をバイオアッセイ誘導分画にかけ、5,6-デヒドロカヴァインを単離した。

3)ゲットウ抽出物は腫瘍の大きさに対して有意な阻害活性を示した。

4)さらに高濃度となっていた肝臓組織ホモジネート中のマロンジアルデヒド,活性酸素除去酵素,カタラーゼについて低減した。

5)さらにデヒドロカヴァインは異種のヒトがん細胞株に対して抗増殖作用を示した。

乳がん(MCF-7),肝がん(Hep-G2)および喉頭がん細胞(HEP-2)に対して記録されたIC50値はそれぞれ3.08、6.8、および8.7 µg / mLであった。

 

これらの結果からゲットウA. zerumbet は抗がん作用を持つことが示唆され,それを含めて潜在的な薬用特性をさらに追求する必要性が示された。

ゲットウの薬理作用についてはいくつかの研究報告があり,マウスでの抗不安や賦活作用,ラットでの筋弛緩作用及び鎮痙攣作用,血圧降下作用や心血管への作用などの他,臨床では消化器系,心血管系の不調改善抗不安や内分泌系の不調による不定愁訴などの症状改善にいいとされている。

 

今回は,新たにEhrlich腹水がん(EAC)細胞について,腫瘍の大きさを小さくすることや,肝臓で高くなっていた,いくつかの酵素の活性を抑えたことがわかった。

 

また,デヒドロカヴァインは,フィジーなど南太平洋の島々の嗜好飲料であり,抗不安や鎮静作用があるとされるカヴァ(コショウ科 Piper methysticum)に含有されるカヴァラクトンの一つで,カヴァの向精神作用にも大きく関与していると考えられているものであり,この物質が抗腫瘍作用を持つことが示唆されたことも興味深い。

〔参考文献〕Zahra MH. Alpinia zerumbet (Pers.): Food and Medicinal Plant with Potential In Vitro and In Vivo Anti-Cancer Activities. Molecules. 2019 Jul 8;24(13).

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